医療費控除いくらから申告できる?対象費用・やり方・計算方法を解説
目次(26項目)
- 1.医療費控除とは(基本の仕組み)
- 2.医療費控除はいくらから申告できる?
- ›基本は「10万円超え」から
- ›総所得200万円未満の場合は「所得の5%」
- ›保険金で補填された金額は差し引く
- 6.医療費控除の対象になる費用・ならない費用
- ›通院交通費は意外と見落としやすい
- 8.家族分の医療費もまとめて申告できる
- ›生計を一にする家族なら合算OK
- ›所得の高い人が申告するとお得
- 11.医療費控除の還付金の計算方法
- ›計算の流れ
- ›具体的な計算例①:年収500万円で医療費15万円のケース
- ›具体的な計算例②:年収700万円で医療費30万円(家族4人分)
- ›計算例③:パート主婦・年収130万円で医療費12万円
- 16.確定申告での申請手順(e-Tax利用)
- ›必要なもの
- ›手順
- 19.領収書の保管・医療費控除の明細書の書き方
- ›領収書は5年間保管する
- ›医療費控除の明細書の書き方
- ›ヘルスケアアプリで日常的に記録する
- 23.セルフメディケーション税制との選択(どちらがお得か)
- ›セルフメディケーション税制とは
- ›どちらが有利か?
- 26.あわせて読みたい
POINTこの記事でわかること
- 1医療費控除は年間医療費が10万円(総所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えると申告できる
- 2病院の診察費・薬代・通院交通費・入院費など幅広い費用が対象になり、生計を同じくする家族分もまとめて合算できる
- 3年収500万円で医療費が15万円かかった場合、所得税+住民税で約2万5,000円前後の還付が見込める
- 4e-Taxを使えば確定申告が自宅のスマホ・PCだけで完結し、領収書の郵送も原則不要
医療費控除とは(基本の仕組み)#
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、超えた分を所得から差し引いて税金を安くできる制度です。所得税の確定申告によって還付金という形でお金が戻ってきます。
会社員の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収されています。医療費控除を申告することで「税金を払いすぎていた分」が還付される仕組みです。住民税も翌年度分が安くなります。
医療費控除の計算式は次のとおりです。
医療費控除額 = 実際に支払った医療費の合計額
− 保険金などで補填される金額
− 10万円(総所得200万円未満の場合は総所得金額×5%)
控除額の上限は200万円です。
医療費控除はいくらから申告できる?#
基本は「10万円超え」から#
医療費控除の申告要件は、その年に支払った医療費の合計(保険補填後)が10万円を超えることです。10万円ちょうどでは申告できず、10万円を「超えた」金額が控除の対象になります。
たとえば年間の医療費が15万円だった場合、控除額は次のように計算されます。
15万円 − 10万円 = 5万円(医療費控除額)
総所得200万円未満の場合は「所得の5%」#
総所得金額(給与収入から給与所得控除を差し引いた後の金額)が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額×5%」を超えた分が控除対象になります。
| 総所得金額 | 医療費控除の足切り金額 |
|---|---|
| 200万円以上 | 10万円 |
| 150万円 | 7万5,000円(150万円×5%) |
| 100万円 | 5万円(100万円×5%) |
| 50万円 | 2万5,000円(50万円×5%) |
パートや短時間勤務で収入が少ない場合は、10万円以下の医療費でも控除できる可能性があります。
保険金で補填された金額は差し引く#
生命保険・医療保険・がん保険などから受け取った給付金、または健康保険の高額療養費・付加給付金として戻ってきた金額は、対応する医療費から差し引く必要があります。保険金を受け取った費用と対応していない費用(たとえばAという入院費に対して保険金を受け取った場合でも、Bの歯科治療費からは差し引かない)点に注意してください。
医療費控除の対象になる費用・ならない費用#
医療費控除の対象かどうかは「治療を目的としているかどうか」が大きな判断基準です。予防や美容を目的とした支出は基本的に対象外になります。
| 費用の種類 | 控除対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 病院・診療所の診察費(初診料・再診料) | ○ | 保険診療・自由診療を問わない |
| 処方薬・薬局での市販薬(治療目的) | ○ | 医師の処方に基づく薬、および治療目的の市販薬 |
| 通院交通費(電車・バス) | ○ | 領収書不要。交通系ICカードの利用履歴や手帳メモでOK |
| 入院費(部屋代・食事代) | ○ | 病院が提供する食事代は対象。差額ベッド代も原則対象 |
| 歯科治療費(虫歯・インプラント) | ○ | 審美目的でない治療は対象 |
| 出産費用・妊婦健診費 | ○ | 出産育児一時金で補填された分は差し引く |
| 介護保険サービス費(一定のもの) | ○ | 医療系サービスに限る。福祉系サービスは対象外のものも |
| 健康診断・人間ドック | △ | 検診で異常が発見され、引き続き治療した場合に限り対象 |
| 美容整形・審美歯科 | × | 治療目的でないものは対象外 |
| 予防接種・ワクチン | × | インフルエンザ等の予防接種は対象外 |
| 通院タクシー代 | △ | 電車やバスが利用できない事情がある場合のみ対象 |
| マッサージ・整骨院 | △ | 医師の同意書がある場合や骨折・脱臼治療は対象 |
| 禁煙補助薬・サプリメント | × | ニコチンパッチ等も原則対象外 |
| 眼鏡・コンタクトレンズ | × | 斜視矯正など治療目的の場合は例外的に対象 |
通院交通費は意外と見落としやすい#
電車・バスでの通院交通費は領収書がなくても申告できます。「〇月〇日 △△病院 往復 ○○円」と手帳やメモに記録しておくだけで問題ありません。交通系ICカードを使っている場合は利用履歴をWebからダウンロードしておくと便利です。年間で数千円〜1万円以上になるケースも多いため、必ず集計しましょう。
家族分の医療費もまとめて申告できる#
生計を一にする家族なら合算OK#
医療費控除は、生計を一にする配偶者や親族(子・親など)の医療費を合算して申告できます。「生計を一にする」とは、日常の生活費を共にしていることを指し、必ずしも同居していなくてもかまいません。たとえば、仕送りをしている大学生の子どもや、実家で暮らす親も対象になりえます。
家族4人(夫婦+子2人)で見ると、一人ひとりの医療費は少なくても、合算すると10万円を超えるケースは珍しくありません。子どもの風邪・歯科矯正・配偶者の婦人科受診なども漏れなく集計しましょう。
所得の高い人が申告するとお得#
家族の医療費を合算する際は、所得が高い(税率が高い)家族が申告すると還付額が大きくなります。たとえば夫の税率が20%、妻の税率が10%の場合、同じ控除額でも夫が申告するほうが2倍の節税効果があります。
医療費控除の還付金の計算方法#
計算の流れ#
医療費控除による還付金は次の手順で計算できます。
- 年間医療費の合計(保険補填後)を集計する
- 10万円(または所得の5%)を差し引いて「医療費控除額」を求める
- 控除額に「所得税の税率」をかけて所得税の還付額を求める
- 控除額に「住民税率10%」をかけて住民税の軽減額を求める
具体的な計算例①:年収500万円で医療費15万円のケース#
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間医療費合計 | 150,000円 |
| 保険補填額 | 0円 |
| 差引後の医療費 | 150,000円 |
| 控除の足切り額 | 100,000円 |
| 医療費控除額 | 50,000円 |
年収500万円(給与所得約356万円)の場合、各種控除後の課税所得は概算で約240万円前後になります。この水準では所得税率は10%です。
所得税還付額 = 50,000円 × 10% = 5,000円
住民税軽減額 = 50,000円 × 10% = 5,000円
合計恩恵 = 10,000円前後
実際には基礎控除・社会保険料控除などの計算が加わるため、上記はあくまで目安です。
具体的な計算例②:年収700万円で医療費30万円(家族4人分)#
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間医療費合計(家族4人分) | 300,000円 |
| 保険補填額(高額療養費) | 50,000円 |
| 差引後の医療費 | 250,000円 |
| 控除の足切り額 | 100,000円 |
| 医療費控除額 | 150,000円 |
年収700万円の場合、課税所得によって所得税率は20%程度になるケースが多いです。
所得税還付額 = 150,000円 × 20% = 30,000円
住民税軽減額 = 150,000円 × 10% = 15,000円
合計恩恵 = 約45,000円前後
医療費が多い年は、確定申告することで数万円単位の還付が期待できます。
計算例③:パート主婦・年収130万円で医療費12万円#
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総所得金額(概算) | 約65万円(収入130万円−給与所得控除55万円−基礎控除43万円後) |
| 足切り額(総所得の5%) | 32,500円(65万円×5%) |
| 年間医療費 | 120,000円 |
| 医療費控除額 | 87,500円 |
総所得が少ない場合は足切り額が10万円より小さくなるため、より少ない医療費でも控除を受けられます。ただし所得税額自体が低いため、還付額も少なめになります。
確定申告での申請手順(e-Tax利用)#
必要なもの#
- マイナンバーカード(e-Taxのオンライン申告に必要)
- 源泉徴収票(勤務先から1月末〜2月に交付される)
- 医療費の領収書または医療費通知書(健康保険組合から届くもの)
- 医療費控除の明細書(国税庁のWebサイトで作成)
- 還付先の銀行口座情報
手順#
Step1:国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスする
国税庁のWebサイト(https://www.nta.go.jp/)から「確定申告書等作成コーナー」へ進みます。「スマートフォンを使ってe-Tax」または「パソコンを使ってe-Tax」を選択します。
Step2:マイナンバーカードで認証する
スマートフォンの場合はマイナポータルアプリ、パソコンの場合はICカードリーダーまたはスマートフォンとの連携でマイナンバーカードを読み取り、本人確認を行います。
Step3:申告書の種類を選ぶ
「令和〇年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書」を選択し、「給与所得がある方」の項目から入力を進めます。源泉徴収票のデータはマイナポータルと連携していれば自動取得できる場合があります。
Step4:医療費控除を入力する
「所得控除の入力」→「医療費控除」へ進み、医療費の合計額を入力します。医療費通知書(お知らせ)がある場合はその金額を入力し、それ以外の費用は「医療費控除の明細書」に個別に記入します。
Step5:還付口座を入力して送信する
還付金を受け取る銀行口座を入力し、内容を確認してe-Taxで送信します。送信後に「受付番号」が発行されれば申告完了です。
申告期間は毎年2月16日〜3月15日です。ただし還付申告(税金が戻ってくるケース)の場合は1月1日から5年間申告が可能です。過去の医療費を申告し忘れていた場合も、5年以内であれば遡って申告できます。
領収書の保管・医療費控除の明細書の書き方#
領収書は5年間保管する#
2017年の制度改正以降、確定申告の際に医療費の領収書を税務署に提出する必要はなくなりました。ただし、税務署から求められた場合に提示できるよう5年間は自宅で保管する義務があります。封筒や100円ショップのファイルに月別・家族別にまとめておくと管理しやすいです。
医療費控除の明細書の書き方#
「医療費控除の明細書」は国税庁のWebサイトからダウンロードでき、e-Taxでは画面上で直接入力します。記載内容は以下のとおりです。
| 記載項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 医療を受けた方の氏名 | 本人・配偶者・子など |
| 病院・薬局などの名称 | 山田内科クリニック、さくら薬局 など |
| 医療費の区分 | 診察費、薬代、通院交通費など |
| 支払った医療費の金額 | 実際に支払った金額(保険補填前) |
| 保険金などで補填される金額 | 受け取った給付金・高額療養費など |
健康保険組合から送られてくる「医療費通知書(医療費のお知らせ)」を利用すると、各医療機関への受診情報をまとめて入力でき、入力の手間が大幅に省けます。通知書に含まれていない費用(市販薬・通院交通費など)は個別に追記します。
ヘルスケアアプリで日常的に記録する#
「ヘルスケア手帳」「医療費管理」などのスマートフォンアプリを使うと、通院のたびに金額を入力するだけで年末に自動集計できます。病院の会計窓口で領収書を受け取ったらその場で記録する習慣をつけると、確定申告時の作業が楽になります。
セルフメディケーション税制との選択(どちらがお得か)#
セルフメディケーション税制とは#
セルフメディケーション税制は、指定の市販薬(OTC医薬品)の年間購入額が1万2,000円を超えた場合に、超えた分(上限8万8,000円)を所得から控除できる制度です。医療費控除の「特例」として2017年から始まりました。
セルフメディケーション税制の計算式:
控除額 = 対象OTC医薬品の購入額 − 12,000円(上限88,000円)
どちらが有利か?#
医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか選べません。選択の目安は次のとおりです。
| 状況 | おすすめ |
|---|---|
| 病院への通院・入院が多く、医療費合計が10万円超 | 通常の医療費控除 |
| 病院にはほとんど行かず、市販薬購入が年1万2,000円超 | セルフメディケーション税制 |
| 医療費が10万円未満で市販薬購入も少ない | どちらも申告不要 |
たとえば年間の病院・薬局での支出が8万円、OTC医薬品が2万円の場合、通常の医療費控除では足切りの10万円に届かず申告できません。しかしセルフメディケーション税制を使えば「2万円−1万2,000円=8,000円」の控除を受けられます(還付額は少額ですが、申告する価値はあります)。
セルフメディケーション税制を利用するには、その年に定期健康診断・がん検診・予防接種など一定の健康の保持増進のための取り組みを行っていることが条件です。多くの会社員は会社の定期健康診断で要件を満たします。
FAQよくある質問
Q医療費控除はいくらから申告できますか?
年間の医療費(生計を同じくする家族分を合計)が10万円を超えた場合に申告できます。ただし総所得金額が200万円未満の方は「総所得金額×5%」を超えた分が控除対象となります。例えば総所得150万円の方なら7万5,000円超で申告可能です。
Q医療費の領収書はすべて保管が必要ですか?
e-Taxで申告する場合、「医療費通知情報」をマイナポータルから取得することで領収書の添付を省略できます。ただし保険者から医療費通知が届いていない分については、医療費の明細書に記入が必要です。領収書は5年間の保存が義務付けられているため、申告後も保管してください。
Q交通費も医療費控除の対象になりますか?
通院に要した公共交通機関(電車・バス)の費用は医療費控除の対象です。ただし自家用車でのガソリン代や、通院が目的でないタクシー代は原則対象外です。体が不自由でタクシー以外で通院が困難な場合など、やむを得ない事情があれば認められる場合もあります。
Q家族の医療費をまとめて申告できますか?
生計を同じくする配偶者・親・子どもなど家族全員の医療費を合算して申告できます。収入の多い方がまとめて申告すると、税率が高い分だけ還付額が増える場合があります。「生計を同じくする」とは、必ずしも同居している必要はなく、仕送りで生活費を支援している親なども対象になります。
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更新履歴 (1件)
- 2026.05.11公開